【空言たわごと(1)】
今の子供たちは部活動でも
「熱中症には気をつけよう」「こまめに水分を取ろう」
と呼びかけられますが、
私の高校時代の部活動は「練習中、水分を取ってはいけない」とのルールがあり、
このために、特にこの夏の時期、大変苦しまされました。
炎天下、「ファイトファイト~」と声を枯らすまで声を出し、
シャツが汗でびっしょりになっても休憩までは水が飲めない、
私も目がチカチカしてふらっと倒れたことが一回ありますが、
どの部員もそんな経験の一度か二度あり、
これは今なら熱中症の症状と言えるのではないかと思います。
なぜ水を飲んではいけないかというと、
これも今から思うと何の根拠もない話なのですが、
水を飲むと疲れやすくなるから、という理由でした。
気持ち悪くなったり倒れたりするのは、
根性がないから、体力がないからだと言われました。
自分も倒れる者を見てそう思いましたし、
みなそう思われたり、言われたりするのが嫌で、
水が飲みたいとも、気持ち悪いとも言い出せず、
休憩が来るまでじっと我慢したものです。
今からするとPTAでも問題視されそうな指導法ですが、
当時(1980年代)は私のような部活動経験をされている方は珍しくないと思います。
「あれだけ苦しかったことが意味のないやり方だったのか」
と今にして思いますが、腹が立つほどでもありません。
それはもう終わったことですし、
高校の部活動程度のことですし、
ある意味根性を鍛えさせてもらったことが後の人生に役立ったので、
あれはあれで青春の思い出の一つと受け止めています。
でもこれは当時の「水飲むなルール」が今の私にさしたる害を与えていないので
こんなのんきなことがいえることであって、
熱中症で人生に大きな悪影響を与えるような事故に遭った当事者には、
当時の理不尽な指導法に強い怒りを覚えることでしょう。
旧日本軍は「上官の命は朕の命」と絶対服従が強いられていました。
どこにでも底意地の悪い人はいるように、
当時もそんな上官もいたようで、そんな上官の下での軍隊生活は悲惨でした。
「体罰」と称したいじめは常態化し、
その暴力で命を落とす者、トイレで自殺する者、逃亡する者もありましたが、
なにしろ「命は羽毛よりも軽しと覚悟せよ」と厳命されていた時代、
不当を訴えるなど誰にもできませんでした。
今のパワハラなんてものではありません。
現代ならブラック企業を訴訟することもできますし、
離職することもできますが、
当時は逃げたら銃殺刑、直訴も銃殺覚悟の行為でした。
どこの国でも戦時中はこうした憤りを禁じ得ない出来事があったでしょうし、
今だって世界にはそんな国もあります。
時代が変わると、あるいは国が変わると、
今までよかれと信じられてきたことが悪いこととされ、
悪いことだと言われたことがよいことだと評価されます。
その都度人は振り回され、やがて裏切られ、
「あれだけ一生懸命耐え忍んできたことは何だったんだろう」
と虚無感にかられる存在なのだと思います。
今日の常識、よいことと思われている事柄の中にも、
十年後には、
「なんと意味のないことをしてきたのか」
「なんと危険なことが平気でなされていたのか」
と世の人からあきれられることもきっとあるのでしょうね。
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