親鸞に学ぶ幸福論

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進化して能力が拡張するのが人生の目的か

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【人生の目的(1)】


人間の脳波と機械をつなげる研究が進んでいることに驚いてしまいました。

センサーを頭に装着し、腕を上げたいと念じるだけで、

脳波を検出して意図を分析して信号に変換し、

義手や義足を操作できるようになるというのです。

脳梗塞やALS(筋萎縮症)などの半身不随で苦しむ人の大きな希望となる朗報です。

他にもAI搭載の自動運転では、乗っている人が生きる危険を察知すると脳から車に信号が送られ、停止するようになるそうです。

また画面にタッチしなくても自己の意思を、パソコンやスマホの画面に文字で表示できるようにもなるとのこと。

電車に乗っている時に手がふさがった状態でも、遅刻だと思った時、

「電車の遅延で遅れます」と文章を作成し、メールで送れるようにもなる、のです。

 

大阪大学の工学博士でアンドロイドの研究で知られる石黒浩氏は、

かかる機械と人間の融合を「人間をさらに高みに連れて行く」と主張し、

「もし人間が技術を使わなかったらただの猿であって、人間でも何でもない」

「進化して能力を拡張させるのが人間の生きる目的だと思う」

と述べています。

 

私は脳波センサーの進化そのものには驚嘆しますが、

この石黒氏の意見にはどうかなと首をかしげます。

確かに人間はかかる進化でより多くの仕事を処理できるようにはなるでしょうが、

幸せになれるかとなると話は別だと思うからです。

そして幸せが人間の個としての目的である以上、

進化して能力を拡張させることが人生の目的とは短絡的です。

 

たとえば先程述べた脳波のセンサーにしても、

人間に恩恵をもたらす一方で、新たな火種の元になりそうです。

「あの人大嫌い」と思った瞬間、その脳波にセンサーが反応し、

それが文章となって相手にメールで送られることもあるかもしれない。

職場でも、あるいは夫婦や親子間であってさえ、

時に「嫌いだ」と思ったり、逆に「好きだ」と思ったり、

感情はころころ変わります。

それがそのまま文字となって相手に知られたら、

私たちはまともな社会生活は営めそうもありません。

それとも人間の本音の部分は、自動運転の急ブレーキのように、

自動制御機能でも付くのでしょうか。

その場合、自分でも本音かどうかわからない微妙な心はどうAIが判断できるというのでしょう。

 

もしくはこんな社会も想定できます。

各個人の暴かれた心の中のデータが国家に、会社に把握され、管理されたらどうなってしまうか、ということです。

国家が権力統制のために人々の心を覗き、

潜在的な危険思想の持ち主は社会の重要なポストに就けないように、

あるいは人々に影響を与えないよう、画策もできるようになり、

会社はそのデータを人事査定に利用するかもしれません。

 

こう考えていくと、とても「人間をさらに高みに連れて行く」ようには感じられず、

むしろ暗澹たる気さえしてきます。

科学が進歩しても、その科学を用いるのが人間である以上、

人間の心が変わらない限り、真の幸福は訪れないのではないでしょうか。

 

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