■仏教に『流転輪廻』という言葉があります。
同じところを果てしなくぐるぐる回る様をいい、
終わることにない苦しみをいいます。
どれだけ一生懸命走っても、
現状を変えようとひたむきに動いてみても
ゴールなき円形トラックを走り続けるような、我々の迷いの実態を
釈尊は「流転輪廻」と呼ばれたのです。
■イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に
欧州の若者たちによる「外国人戦闘員」が後を絶ちません。
アメリカを中心とした影の世界支配勢力との聖戦だと
ネットを通じたプロパガンダにあおられ、
ここに俺の生きる場所があると飛び込んでくるというのです。
ところがIS国の内側に来てみると、
子供たちにいたるまで容赦ない異教徒の大量殺戮や、
情報の完全規制で物言えぬ国民の姿を目の当たりにして
『思い描いていた世界と違う』と絶望します。
そこでまた決死の覚悟で脱走しようとしますが、
結果として捕まり、処刑されるというケースが
最近目立って増えてきています。
■ウクライナ情勢も予断を許さない状況が続いています。
分離独立を求めてデモ運動する国民の姿が映し出されますが、
果たしてデモ行進の先に幸せが待っているでしょうか。
現在の世界の自殺率を見ると
10位以内に旧ソビエトから独立を勝ち取った国が
6カ国入っています。
ソ連の圧制から開放され、
民主化を成し遂げたあのときは、
それらの国の人たちは狂喜乱舞していたのです。
今や「あのときのほうがまだよかった。」
「いっそのこと死んだ方がましだ。」と
嘆きの声があふれています。
どれだけ政治形態が変わっても、経済改革がなされても
一向に重荷が下ろせないのは、彼らの姿が雄弁に語っています。
■世界を見るまでもなく、日本を見ても同じです。
大化の改新、公家政治、武家政治、明治維新、
何とか重荷を下ろそうと
「刷新」「改革」「新政」「維新」と
鼓舞してきたものの、
重荷を右肩から左肩に移し変えただけで、
「変わった」が、「幸せになった」感がない。
重荷を下ろせず、汲々としている実態は
やはり同じことでしょう、
人類の歴史は流転輪廻の歴史です。
このゴールなき、果てしなき流転輪廻からの「出離」が
仏教の究極の目的です。
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