「ローマ人の物語」の著者である塩野七生が
「一国の最高権力者がしばしば変わるのは、
痛みに耐えかねるあまりに
寝床で体の向きを始終変える病人に似ている。」
と言っています。
そしてゲルマン大移動で滅びていった5世紀の西ローマ帝国は
まさにそういう状況だった、と。
帝国の最後は
蛮族にガリアもイスパニアも北アフリカも侵略され、
最後の砦のローマで最後一致団結戦った挙句の落城、ではありませんでした。
ローマ市内で、
同じローマ人同士の権力闘争の内戦や暗殺で
滅んでいくのです。
今日多くの国が
選挙で選ばれた首相や大統領に
4年~8年の任期を保証するのは
政局が安定しなければ、
国の内外の諸問題に対して
腰を落ち着けて対処することができなくなるからです。
権力闘争の確執で勝ち負けに熱を上げていては、
国民の生命と財産を守るという、
本来の政治の使命に没頭できるはずがありません。
徳川家康は江戸幕府の方針として、
次期将軍は長男にする、と決めました。
どんなに愚鈍でも、です。
なにより、次期将軍職をめぐって
兄弟が派閥を作って対立し、
幕府の力が弱まるのを恐れたからです。
アメリカの補佐官が日本の首相の名前を失念し、
あわてて書類に目を通し、
「よく変わるから」と
新聞記者に向かってジョークを言う一幕がありましたが、
ローマ史に詳しい西欧人は
日本の首相が目まぐるしく変わるのを
どう見ているでしょうか。
【獅子身中の虫】という言葉があります。
百獣の王、獅子を倒せるものはジャングルにはありませんが、
獅子はその身中巣食う内敵によって滅ぼされるのです。
お互いの利害打算を超えて、
一つの崇高な目的に向かって
仲良く、団結しなければならないのは
お釈迦様も仏弟子に重ねて諭され、
戒めていかれたことであります。