【愛別離苦(1)】
「♪しゃぼん玉とんだ 屋根までとんだ
屋根までとんで こわれて消えた♪」
よくうたわれる「しゃぼん玉」のはじめの一節ですね
作詞は野口雨情。
大正九年、雨情は童謡の全国キャンペーンをしていました。
ちょうど四国徳島にいた時です。
故郷の茨城から、二歳になったばかりの娘が
疫痢(えきり)で急死したという悲しい知らせが届きました。
愛し子を失った悲しみ、
あまりにもはかなく消えたわが子のいのちへの愛しみが
この童謡を生んだのでしょう。
雨情は続いて第二節に、
「♪しゃぼん玉消えた とばずに消えた
生まれてすぐに こわれて消えた
風、風吹くな しゃぼん玉とばそ♪」
と歌っています。
雨情はこの短い一節のなかに
「消えた」という語を三回も用いています。
幼ない愛し児を失った雨情の悲しみが
どれほど深いものであったか、うかがえます。
仏教ではこの苦しみを『愛別離苦』といいます。