【意業(2)】
政治家が説くところを、
差別の視点を持たないように努めて、
虚心坦懐に聞いていると
護憲派といっても、改憲派といっても、
右派、左派といっても
それぞれにもっともな意見を言っている気になります。
彼の活動には意義がある、耳を傾ける価値がある、と思えてきます。
ところが、人間ですから当然なのですが、
彼にそう言わしめている動機には、
強い損得勘定、あるいは非常に個人的な執着や嫉妬心が
かくれているのは否めません。
多分にそれは、本人さえ気づいていない感情であったりします。
その人の真の動機を、本人以上に心底まで全て見抜く人があれば、
選挙演説も、政治論議も一切は
「そらごと・たわごと・まことあることなし」(歎異抄)と、
なるでしょう。
芥川龍之介ほど頭のいい人になると、
その欺瞞に満ちた人の姿がよく見えてしまったのでしょうか、
こんなことを書き遺してます。
「周囲は醜い。自己も醜い。
そしてそれを目のあたりに見て生きるのは苦しい」
私たちはそこまで相手を見抜けずにいる、一種の鈍感さで、
芥川のように自殺することなく、
日々の生活を営んでおれるのではないかと思えてもきます。
職場でも家庭でも、相手の心の中を知らないから幸せでいられる、
理解できないから、生活は成り立っている、といえるのでしょう。