【慈悲(1)】
■仏教では人間の慈悲には、三つの欠点があると説かれていますが、
今日はそのうち『盲目の慈悲』という問題点を
掘り下げてみたいと思います。
■「エニグマ」とは、当時、解読不可能といわれていた
ナチスドイツの誇る暗号です
イギリスは、エニグマ解読に約1万人を投入し、
ついに解読に成功します。
その結果、ドイツがコベントリーという町を
11月14日に空襲すると判明しました。
情報はチャーチルのもとに伝えられ、暗号研究所のメンバーは、
イギリス軍がドイツ軍を返り討ちするニュースを
心待ちにしていました。
ところが、チャーチルはこの情報を無視します。
コベントリーは無防備のまま空襲を受け、
街は壊滅的な被害を受けました。
■このとき、チャーチルは、コベントリーを失うことよりも、
イギリスの暗号解読能力を知られることを恐れたのです。
この難しい政治的決断を、後にチャーチルは
『第2次世界大戦回顧録』で告白しました。
『回顧録』はノーベル文学賞を受賞し、
思慮深き勇断であった、と評価されています。
■しかし、もし空襲された町に、あなたの家族が住んでいて、
殺されてしまったとしたら、
チャーチルにあなたは、どんな気持ちを抱くでしょうか?
■「大の虫を生かすには、小の虫を殺さねばならぬ」
ということわざもあります。
「小善は大悪に至り、大善は非情なり」
という格言もあります。
■コベントリーの町の中心広場には、
第2次世界大戦時に爆撃を受けた建物が、
今でも当時のまま残されています。
市民はいつまでも、この空襲を忘れずにいます。