【愚痴(3)】
ある40代の女性から聞いた話です。
家庭の悩みを寺院に相談したところ、
「7代までの先祖を供養すれば、幸せになれる」と言われ、
「1人の先祖に1万円の供養料」と金額も示されたそうです。
自分たち夫婦両家の先祖なので、508名になる。
その供養を途中までして、
「どうしてこんなにお金がかかるのか」
と思うようになり、悩んでおられたそうです。
とんでもない話だなと思います。
寺の僧侶の本来の任務は、仏教をお伝えすること。
先祖供養すれば幸福になれる、という鬼神信仰の迷信を打ち破り、
一切の運命は、自分の行為によって生み出される、
仏教の根幹、因果の道理を明らかにしなければならないのに、
こともあろうに供養料目当てに、
釈迦が排斥された、先祖供養の迷信に便乗しているのですから
あきれるばかりです。
「如来の法衣をつねにきて 一切鬼神をあがむめり」
袈裟をかけて、形こそ僧侶の格好をしているが、
鬼神を崇めている者ばかりではないか、と
親鸞聖人が嘆かれた当時の世相と、今も変わりません。
先祖の祟りだの、先祖の霊の仕業だなどと聞かされると、
気にしてしまう人が多いのは、
先祖と聞くと、運命を引き寄せる、恐ろしい力があると、
思ってしまうからでしょうか。
しかし先回もお話ししましたように、
先祖といっても、一番近い先祖は「親」です。
親が子供の不幸を願うことがあるでしょうか。
親は子供に幸せになってほしいと、
そればかりを思い続けてくださる、有難い存在です。
子孫をタタるとか、苦しませてやろうと思うはずがありません。
自分のことを考えてみても分かります。
自分が亡くなった後、
残された子や孫やひ孫に苦しませようという気持ちが起きますか。
幸せに、笑顔多い人生であってほしいと切に念じるばかりでしょう。
だいたい死んだ後、人の運命をどうこうできる存在になれる
と思われますか、
自分の運命でさえ、思った通りにいかずに悶々としているのに、
自分のことでも精一杯なのに、
そんな自分が、人の運命を左右できるような存在に
なれるものでしょうか。
釈迦はこれら世の迷妄を破り、
徹頭徹尾、己の運命の原因は己の行為による、と
教えられています。
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