【無常(2)】
"ある孤島の大邸宅に、10人の男女が集まっている。
お互い見ず知らずの彼らは、謎の男から招待されたのだった。
まもなく晩餐が始まる。
申し分ない料理とサービスに、みな上機嫌になっていた。
突如、不気味な声が部屋中に響きわたる。
「諸君はそれぞれ、次にのべる罪状で、殺人の嫌疑をうけている――」
その声は、10人全員の過去の犯罪を暴きたてた。
人々は動揺する。
姿なき謎の男の告発だった。
やがて10人が、次々と殺されてゆく。
1人、また1人・・・ついには、そして誰もいなくなった"
ミステリー作家、アガサ・クリスティーのつくった物語です。
地球には、現在約73億の人々が生きています。
お互い、ほとんど見ず知らずの男女ばかり。
しかも、何人かは確実に、日々、命を失っています。
ガンで死ぬ者、飛行機で墜落死する者、戦争で爆死する者、
交通事故死、ウラミをかって刺殺される者、ショック死する者、
人ばかりにそれらがやってくるのではない。
やがて自分の番がやってくる。
どれだけがんばったところで、百年もすれば、
今この世に生存している人は、
「そして、誰もいなくなった」となります。
この万人の将来を、仏教は深く見つめます。
それを『無常観』といいます。