【求不得苦(1)】
■『求不得苦(ぐふとっく)』という言葉が仏教にあります。
仏教では、私たちのもう逃れられない苦しみを
八つにわけて「四苦八苦」といわれます。
八つの苦しみの波が絶えず襲い、
渡るに渡れぬ苦しみの海のようなものが人生だ、
と説かれています。
その八つの中の一つに『求不得苦』があります。
「求めても求めても、得られない苦しみ」のことです。
■小学生に「将来の夢は?」と尋ねれば、
「サッカー選手になってW杯出場」とか
「AKBのメンバーになりたい」とか
「ノーベル賞取りたい」などと元気よく答え、
それを聞く親や教師もうれしそうに目を細めます。
■しかしそんな子供たちも成長するにつれ、
いつしか夢を語らなくなり、周りも聞かなくなります。
夢はかなわないんだろうなと、中学生くらいで、
うすうす感づいてきて、ため息ついて思う。
「結局、普通の会社のサラリーマンになって、
25ぐらいで結婚して、子供ができたらローンで家建てて、
どこにでもある平凡な人生かな」
■ところがさらに大人になって知らされるのは、
その平凡な人生のハードルが思った以上に高い、ということです。
○まずそもそも普通の会社になかなか入れない。
サービス残業、過酷なノルマ、休日出勤・・・
普通の会社には入れても、正社員になかなかなれない。
○さらに、結婚もできない。
そもそも結婚以前に、彼女ができない。
これは、あるツイッター。
「小学校→中学行けば彼女ができる
中学校→高校に行けば彼女ができる
高校→大学に行けば彼女ができる
大学→就職すれば彼女ができる
社会人→n歳までには彼女ができる」
多くの人がこのつぶやきに「オレ笑えない」とコメントしている。
○このご時世、マイホームを建てる決断ができる立場の若者は
そう多くない。
「家どころか車も買えない」との嘆きの声が聞こえてくる。
■それら現実が年を追うにつれ知らされてくると、
「我が家で食卓囲んで、家族団らん」という「平凡な人生」は、
涙ぐましい努力の末に到達できることだったかと、
わかってくる。
『求不得苦』の波に翻弄され、苦しんでいる人生の実態が
知らされてきます。
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