■「人をまとめていく力がほしい」という声を聞きます。
マネジメントする立場の人、管理職の人には
必ず求められる力ですから、切実でしょう。
■書店に行くと、
「人を動かす」「影響力を持つ」などのテーマの本が
言葉巧みの題名で並んでいます。
私も題名にそそられる本があると、
「さっそく動かされたな」「おっと影響されたな」
と苦笑します。
「人を惹きつける言動」
「この人についていきたいと思わせる態度」
「ついうなづいてしまうトーク」
など、誰しも知りたいことでしょう。
■しかしここで平凡な真理ながら
忘れがちのこととして一つ言いたいのは、
「まとめる力も大事ですが、
まとめたものをどこに引っ張っていくか、
それこそ大事ではないですか」
ということです。
■ヒトラーの演説はドイツの国民を熱狂させました。
彼の大衆をまとめる力は絶大でしたが、
ドイツ国民をどこへ引っ張っていったか。
■まとめる力が絶大でも、方角を間違えた場合は悲劇です。
まとめる力がある人ほど、被害は甚大になります。
今回の米大統領選は、
「史上最も人気のない2人の候補が、
史上最低の泥仕合のテレビ討論」
と揶揄される有様ですから、
両候補とも、人をまとめる力はあまり期待できませんが、
政治家を選ぶ際も、冷静に見つめなければならないのは、
まとめ上げる人が、どこへ引っ張ろうとしているか、
という点でしょう。
まとめ上げることが上手な人だと思ったときこそ、
「この人はどこへ導こうとしているのか」
有権者は冷静沈着さが求められると思います。
■まとめる力を論ずる前に、
「まとめて、どこに持っていきたいのか」
「その目指す目的には、揺るぎない意味はあるのか」
まず自らにも問わなければならないし、
人にも問わねばならないでしょう。