【法鏡(3)】
お釈迦さまは「仏教は法鏡なり」と説かれています。
「法鏡」とは、「真実の姿を映す鏡」ということです。
「常に欲と怒りの心に振りまわされていること」
「いつ死ぬかわからぬ、はかない命であること」
など仏教で赤裸々にされる人間の本当の姿は
時に私たちが目を背けたくなるほどですが、
お釈迦様がそのように説かれるのは、
私たちをいたずらに暗く沈ませるためではなく、
現在の人生に、真の安心と満足をもたらす第一歩だからです。
今日ネットで出回っているエクスタシーなどの麻薬は
服用後30分で幸せな気分になり、
赤の他人とですら、すぐに親密感が生まれるそうです。
元々はベトナムの戦場から戻った兵士のトラウマを抑えるために
開発された薬ですが、今は市民に出回りました。
脳細胞からセロトニンをシナプスへ放出し、
またセロトニンが脳細胞に再吸収されるのを防ぎ、
約3時間~5時間にわたって幸福感が続きます。
しかし繰り返し使用すると
通常のセロトニンの伝達が阻害されていきますので
悪質な副作用を覚悟しなければなりません。
これでは怖くて、手を出せません。
ではもし今後、副作用がまったくなく
死ぬまでずっと多幸感を得られる薬が開発されたとしたら、
どうでしょう。
あなたはそれを飲み続ける人生を選びますか。
ハーバード大学の哲学者ロバート・ノージックは
「経験マシーン」という架空の例を用いて
この点について有名な考察をしています。
脳の快楽部に何らかの電波が送られ、
何もしないでも快楽感、幸福感が感じられるというマシーンです。
このように何もしなくてもマシーンの力で
快楽を感じるような人生を送りたいか、
と学生にアンケートをとると
同意するのはごく少数派だったそうです。
人間は幸福を追求して、科学、医学、経済、法律、
あらゆる努力を続けてきたのですから、
薬物やマシーンの力で幸福感をずっと感じられるなら、
それこそ科学の最高の形ではないかとも思えますが
なぜかそれを拒む学生の、その気持ちは、
真実を知りたい、そしてかりそめの安心や満足ではなく、
本当の安心、満足を求めたいという、
仏教でいうところの「菩提心」といえましょう。
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