【慢(1)】
悪い人間の集まっている処は、と問われたら、
“それは刑務所だ”と答える人が多いかと思います。
ところが刑務所の囚人たちは、
自分のことを悪い人間だとは思っていないといいます。
「君は粉飾決算、架空取引の罪でここに来ているが、
悪いことをしたと思っているか」
「善いことをしたとは思わぬが、俺はただの経済犯だ。
そんなことで刑務所に入れるのはどうかと思う。
暴行や傷害罪より、余程ましだと思っている」
そこで傷害犯にきいてみる。
「悪いことをしたと思っているか」
「善いとは思わぬが、人を殺したより余程ましだと思っている」
と、平然と答えます。
では殺人犯の囚人はどうか。
「そりゃ相手に気の毒とは思っているが、
あれはカッとなっての一時の出来心だった。
こないだテレビで話題になったあいつなんか、
連続で人を殺した殺人魔だったでないか。
あれは人間じゃないよね」
と言います。
どこどこまでも「あいつよりましだ」とうぬぼれます。
慢心からはどこまでいっても離れ切れません。
「俺って、最低だよな」
と自嘲気味に言った時に
「そうだ、お前を最低な奴だと言っている奴、何人もいるよ」
と返せば、とたんに血相変えて
「誰、そんなこと言っているのは?」
と詰め寄ってくる。
「この件は私に問題あったと思います。申し訳ありません。」
と頭下げたときに
「そうだよ、お前のせいだよ」
と言下に返されると、カチンと来て
「しかし私だけのせいかと申しますと、実は~」
と語気を強めて食って掛かる。
慢心の固まりである人間は自己を正しく見ることはできない、と
お釈迦様は説かれています。
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