【娑婆(2)】
『娑婆』とは仏教の言葉で、意味は「堪忍土」。
「堪忍していかねば生きていけない世界」ということです。
あっちぶつかり、こっちぶつかり、
思うままに生きている人は誰もいません。
それは一党支配の独裁者も、超大国の大統領も同じです。
「智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい」
「智に働けば角が立つ」
あいつは冷たい。人情味が薄い。杓子定規だ、理屈っぽい。ドライだ。
「情に棹させば流される」
優柔不断だ、頼りない、日和見主義だ、一貫性がない、
「意地を通せば窮屈だ」
意固地だ、頑固だ、融通が利かない、偏屈だ、
「とかくに人の世は住みにくい」
どんな生き方をしても、堪え忍ぶ世界です。
ではなぜこの世は、そんな住みにくく、生き辛い世界(娑婆)に
なってしまうのでしょうか
それは娑婆に住まいしている私たちが、煩悩の塊だからです。
自分さえよければいいと欲に動かされ、
思い通りにならないと腹を立て、
しかも慢心一杯だから、もう自分が悪いとは思えない、
そんな煩悩の固まりの人間が住まいしているのが、
「穢土」(煩悩に穢れた世界)ですから、すぐぶつかってしまい、
おのずと堪え忍ばなければやっていけない世界となるのです。
「住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、
詩が生まれて、画ができる。
人の世をつくったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向こう三軒両隣りに、ちらちらするただの人である」
どの会社に勤めようが、どの人と結婚しようが、
どの国に住もうが、どの時代であっても、
そこにいるのは煩悩いっぱいの人間ですから、やはり「穢土」。
だから、常に堪え忍んでいかねばならない「娑婆」になるのです。