【悪口(1)】
健康寿命が延びたことで、
「定年70歳」「生涯現役」といわれる時代になり、
最近では同じ職場で20代から70代まで働いているそうで、
世代間のカルチャーの違いに戸惑う場面が多くなっているようです。
そんな時代だからこそ、年長者の立場で特に気をつけたいのが
「最近の若い者は~」「おれたちの頃は~」
という言葉です。
年長者が若者と一緒に何かすると、
必ずと言っていいほど出てくるぼやきが
「おれたちの頃は~」の苦労談であり、
「最近の若い者は~」の批判です。
勤務経験が豊富な年長者から見れば、
若者に足りないところがあるのは当然です。
そこをアドバイスしたり、フォローするのは大事なことですが、
「子供叱るな、来た道じゃ」とことわざにもあります。
「あまり叱るな、お前も通った道じゃないか、いや、もっとひどかったじゃないか」
との反省を忘れてはなりません。
また経験しているからといって自分の主張が、必ずしも正しいとも限りません。
時代が相当、自分が経験した当時とは変わっているからです。
どうしても私たちは、自分の培ってきた文化、ものの考え方が正しくて、
向こうは間違いだとしか思えず、
若者に意見を押しつけてしまいがちなので、
これも気をつけなければなりません。
さらに言えば、自分より若い人の方が
世相に敏感で、IT技術も長け、柔軟な発想もでき、行動力もあり、
自分にはない良いものをたくさん持っているのを自覚しなければなりません。
大いに学ばなければならないことが、若い世代にはたくさんあります。
そういう自己反省を忘れている時に出てくる言葉が
「おれたちの頃は~」であり、
「最近の若い者は~」との批判なのです。
約4800年前のアッシリアの石碑にも、
「未来は明るくない。最近の人々の有様は目に余る」
と世を嘆く言葉が刻まれているそうで、
いつの時代でも、こうぼやきたくなるのが、
人間の性(さが)なのでしょう。
ホンダ自動車を創業した本田宗一郎は、
生涯現役で経営に当たった人でしたが、
そういう本性を律していたのか、こんな言葉を残しています。
「定年の必要は実際のところ、年老いたということではない。
おもな理由は、若者たちに道をあけなければならないということである。
もし年寄りが経営者であり続けるなら
せめて若い人の悪口を言わないという保障をしてほしい。
もう一つの注文は、時代の変化を勉強することだ」
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