【火宅無常の世界(2)】
約七百年前に書かれた『歎異抄』に『火宅無常の世界』という言葉があります。
屋根のひさしに火が燃え移れば、みるみるうちに家財道具共々、
家屋全体が火に包まれてしまうように、
私たちの生きているこの世は、思いもよらぬ事が突如として起き、
何十年と大事にしてきたものも一気に崩れ去ることがあります。
それを親鸞聖人は『火宅無常の世界』と言われたのです。
「いやいや、それは親鸞聖人当時の700年前のことだからでしょ。
あの頃は伝染病も多く、飢饉も相次ぎ、戦乱に明け暮れ、
人々の間で厭世的な気分が高まっていた。
それで不安の絶えない“火宅無常の世界”と言われたんだよ」
とことさらに時代背景を強調する人があります。
しかし決してこれは七百年前の時代だけではありません。
今日でも『火宅無常の世界』は少しも変わりません。
卒業旅行に海外に行く予定を立てていた女子大生がいた。
ところが飛行機事故がテレビで報じられると、
心配になった母親が「海外はやめときなさい。日本にしなさい」と言う。
そこで車で行ける国内旅行にしたものの、
対向車線からの暴走車との正面衝突で死亡、とのニュースにまたも母親が心配になり、
娘に「車はやめときなさい。新幹線にしなさい」と忠告する。
ところが事故がないからと安心していた新幹線で、通り魔殺人事件が起こる。
そんな危ないものに大事な娘を乗せられないとお母さん、
「遠くに行くのをやめて近所にしなさい」と言う。
ところが今度は都内の路上で女性が無理矢理車に乗せられ、
殺害される事件が報道された。
するとお母さん「外出せずに家の中にいなさい」。
ところが今度は震度6以上の大地震で、
タンスの下敷きで死亡というニュースが報じられる。
ここだけは大丈夫と安心できる処など、どこにもないようです。
『死の縁、無量なり』と仏教では説かれます。
死ぬ危険はどこにでも存在しているので、どんな死に方をするか、誰にも予想できません。
いつの時代でも、どこの場所でも、常に死の危険にさらされているこの世の実態を、
『火宅無常の世界』といわれているのです。
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