【精進(1)】
「AIが台頭して将棋界が進歩した今、残念ながら私のこれまでの経験はほとんど生きません」
これは通算勝利歴代一位の将棋棋士、羽生善治名人がインタビューで語っていた言葉です。
こう言えてしまうところに、
長年にわたってトップで居続けることができる羽生名人の非凡さがあるように感じます。
なにしろ国民栄誉賞を取るほどの棋士です、
ふつうなら「おれはできるんだ」と思ってしまいますし、
過去こうしてオレは勝ち続けてきたんだ、との自負心もあるだろうし、
なかなか新しいことに挑戦できなくなると思うのです。
ところが羽生名人は「これまでの経験はほとんど生きない」と自己の現状を受け止め、
「最新の研究結果を知る努力がすごく問われるようになりました。AIの手を自分なりに理解し、納得することが大事です」
と今なお、AIソフトを前に格闘し、現状を打破しようとしています。
「慣れない環境に極力身を置き、惰性で同じやり方を続けないようにしている」
とも語っていました。
10代、20代が台頭する将棋界で、49歳にして向上心を失わず、
自分を変えることのリスクを恐れず果敢に挑戦するその姿に
感銘を受けました。
負けておれないなと刺激を受けます。