【恩(1)】
ある30代のお母さんから聞いた話です。
DVDで映画を7歳の子供と一緒に観ていた際、
「どうしてこの人は怒ってるの?」
「なんで泣いてるの?」
と子供がいろいろ質問してきたそうで、
せっかくいい映画を観ているのに子供の質問が煩わしくて、
適当に生返事したり、いい加減に受け流していたところ、
子供が途中で「もういい」と、部屋を出て行ってしまったそうです。
お母さんは「しまった」と思ったとのこと。
こんな話を聞くと、お母さんは大変だなあ、と子育ての苦労の一端が思い知らされます。
「ゆりかごを動かす母の手はやがて国をも動かす」
とはイギリスのことわざですが、
発明王エジソンの逸話にもこんなのがあります。
エジソンは子供の頃、母親から「なぜなぜ坊や」と言われていました。
どんなことにも「どうして」「なぜ」と聞いている我が子に
お母さんは「なぜなぜ坊や」と目を細め、優しく根気よく答えてくれたそうです。
ところが小学校の教師はそうではありませんでした。
授業中には「1+1=2」と教えられても鵜呑みにする事が出来ず、
「1個の粘土と1個の粘土を合わせたら大きな1個の粘土なのに、なぜ1個なの?」
と質問したり、国語の授業中にも、
「A(エー)はどうしてP(ピー)と呼ばないの?」
と質問するといった具合で、
授業中には事あるごとに「なぜ?」を連発するエジソンにあきれ、
入学からわずか3ヶ月で退学させてしまいます。
父親も知恵遅れだとレッテルを貼りました。
周り中から馬鹿呼ばわりされたエジソンでしたが、母親だけは信じました。
「この子は落ちこぼれなんかじゃない」
「この子は駄目な子ではない」
それからは、勉強はすべて母の手によりました。
母はエジソンに自由に学んでもらいたいと、家の地下室に様々な化学薬品を揃えます。
もし学校で堕ちこぼれ扱いを受けたように、
母親からも劣等生の烙印を押されていたならば
今のエジソンはなかったでしょう。
彼の偉大な発明は、子供を信じ続けた偉大な母親の存在にあった、といえます。
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