【縁(2)】
明治時代の小説などに、親戚に借金を頼む場面が出てきますが、
あの時代、借金といえば親族や友人に借りることだったとわかります。
これは相当借りる本人にとって恥ずかしく、屈辱的なことなので、
借金自体に心理的ハードルが高かったと思います。
当時もう一つお金を手に入れる方法として、
質屋で自分の服や宝飾品を質入れするという手もありました。
しかしこれにしてもその街に一つだけの質屋に、
しかもその質屋が知り合いであったケースも多かったでしょうから、
やはりハードルが高かったことと思います。
「早足で質屋ののれんをくぐる」といわれるのも、
近所の人に見られたくない、恥ずかしいことだからこそでしょう。
それが今日はどうか、
借金も「キャッシング」などと言って、
カード一枚で、誰にも見られるのでもなく、簡単に金を引き出すことができます。
スマホやパソコンで、ちょこっと情報を打ち込むだけでもあっさり貸してくれます。
クレジットカードの「分割払い」や「リボ払い」、通販サイトの「ツケ払い」などで、
返済が負担のならないような錯覚をさせ、
銀行も消費者金融も「気軽な利用」を促進しています。
借りる方としては、頭を下げる必要もなければ、恥ずかしい思いだってしないでいい。
「ああ、こんなに楽に自分のものになるお金なら、最初から自分のお金だったのと同じだ」
と勘違いする若者が出てきても、仕方がないと思います。
しかしそのような「気軽な借金」の結末は悲惨です。
離婚、退職、犯罪、家庭不和、夜逃げ・・・・・・
カードの借金で首が回らなくなり、身を持ち崩す人が毎年どれだけいることか。
自制心がなく、使い込んでしまった本人に責任があるのは当然で、
自己責任と言ってしまえばそれまでですが、
金銭管理もできていない若者相手に
いとも簡単に借金させる銀行や消費者金融のあり方が問題です。
借金による悲劇を繰り返さないためには、
借金しないよう各人の自制を促すのも大事ですが、
それよりなお問題視しなければならない、なんとかしなければならないのは、
簡単に借金をさせてしまう環境、
借金で苦しまざるを得なくさせる悪縁です。
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