【相対の幸福(1)】
国民一人当たり10万円、本来ならうれしいはずですが、
なぜか巷には不満、怨嗟の声が満ちています。
どうしてでしょうか。
たまたまデパートで引いたくじで10万円の商品券当たったら、
それはそれは幸せな気持ちになり、自然と笑い顔になり、
家族と喜びを分かち合うと思うのですが、
なぜか今度の政府の決定はそんな気持ちになれない、
これは人と比べる幸福(相対の幸福)しか知らない私たち凡夫の実態を表しています。
私たちの幸福感というのは、人と比べてのことなのです。
自分の手元に受け取る「10万円」自体は実は幸福でも不幸でもない、一つの事実に過ぎない。
それが幸福となるかどうかは、
ほかの人と比べてみて、のことなのです。
他の人と比べて自分の方が損をしていると思うと面白くない、
「どうしてオレはこれだけしかもらえないのか」と辛くなってくる。
自分より得している者がいると許せない気持ちになる、
「なんであいつがあんなにもらうんだ」と不愉快だ、
こういう幸福の捉え方しかできないのが我々凡夫(人間)であり、
これを「相対の幸福」と仏教で説かれます。
この度の国民の反応は、その相対の幸福の実態が露わになった一件だと思いました。
最初は「減収世帯に30万円」という政府の発表でしたが、
それが国民にすごく不評でした。
ほとんどの国民はもらえないからです。
なんで一部の世帯だけが、と面白くなかったのです。
「わかりにくい。結局出したくないんだろう、国民を助ける気持ちあるのか」
と不評、ブーイングの嵐でした。
アメリカでは大人13万円、子供5万5000円、ドイツは事業者に申請二日後に60万円、
それと比べてしまい、もらえない自分がとても不幸な気持ちになったのです。
それで政府もこれはまずいと思ったのか、朝令暮改で発表したのが
国民一律一人当たり10万円の給付だったのですが、
すると今度は、30万円もらえるはずだった人が黙っていない、
なんでコロナ自粛で困窮している俺たちのもらうお金が減らされて、
別に減収にもなっていない人たちがもらえるんだと声を上げました。
「10万円なんて全然足りない。2月半ばからお仕事無いに等しい状態で切り詰めてやってきたのに。30万に希望の光を見出だしていたのに。首くくれってことか」
「一ヶ月まるまる仕事休みで来月は給料ゼロに近いのに10万で足りるわけがない。世帯主とか関係なしに収入が減った人を対象にもっと考えて頂きたい」
となった。
さらに世の中には子供がいる人と子供がいない人があり、
これまた政府の決定次第で不公平になると敏感に受け止めた人が多く、
「10万円 子供」が検索ホットワードとなりました。
「シングルマザーで子供五人います。子供にお金がかかるのに、子供は1人のうちに入らなかったらありえません。意味がない」
という人と
「子供は貰えないようにして欲しい‼︎子供がいない世帯との差が出過ぎる‼︎子供は税金払ってないんだから‼︎」
という人があり、
これに関しては結局子供ももらえることになりそうですね。
他にも「公務員はたとえ病欠しても3ヶ月は給料もらえるし支給無しでいいでないか」という人もあり、
「生活保護がもらえるのはおかしい」という人もあれば、
「生活保護うけてるシングルのお母さんにも当然必要!いつもは格安の給食なのに三食になってるんやもん!独身貴族はいらんし」
「富裕層もいらんやろ。10万とか。もっと必要な人に必要なだけあげて欲しい」
「いや高所得者は低所得者よりもたくさん税金を払っているから、高所得者にも払われるべき。むしろ大量の税金を払っているのにもらえないのはおかしい」
「日本国籍持ってない外人が10万受け取るって普通におかしくね?」
と議論百出、何しろ一言で言うと「不公平だ」との憤りが蔓延しているのです。
世の人生本にはたいてい
「幸せの物差しは自分で決めなさい、人と比較するのをやめよう」
「人と比べる自分にサヨナラする」
と勧められているのですが、
こういう騒ぎを目の当たりにすると、
まさにこういう幸福感の勧めは「言うは易く、行うは難し」の典型のように思えてきます。
むしろ人と比較する心からはもう離れられない、やめられない、サヨナラできない自己を認めて、
そのうえでそんな私はどうしたらいいのか、から考えるべきではないかと思います。
相対の幸福をもっと詳しく知りたい方はこちらまで
=========
仏教を分かりやすく体系的に学べる
全20回の無料メール講座です。
おもしろそうだなと思われた方はこちらから登録できます。
登録解除もいつでも自由なので、一度お試しに覗いてみてください。