【布施(1)】
2003年、ある経済誌の記者が「中高年の雇用を手厚く保護していることが若者のリストラや就職難を招いている」との問題意識で特集記事をシリーズ連載しようとしました。
ところが第1回が掲載されるや、新聞社に激しい抗議の電話が殺到しました。
そのほとんどは当時50代半ばの団塊の世代であり、その新聞の主要購買層だったのです。
不買につながったら大変だと青ざめた経営幹部はあわててその企画を取りやめにしたそうです。
この一件はマスコミ関係者に、団塊の世代の既得権を非難するのはタブーだと強く知らしめることとなりました。
これは政治家も一緒です。
高齢者への社会保障費が若い世代を経済的に圧迫し、少子化を招いているとも言えるのが、今日の日本ですが、こんなことは人口動態で1970年代には予想されていたことでした。
ところがここにメスを入れようとすると、大票田である高齢者の反発を招くので、誰も声を上げられず、改革を先延ばしにしてきたのです。
政治家にとって団塊の世代の票田で当落は決しますから、団塊の世代への手厚い保障は動かせない「聖域」です。
このように政治家もマスコミもこのままではいけないと薄々気づきながらも、マジョリティ(多数派)の意見に迎合し、マイノリティ(少数派)の意見を黙殺してきて、今の日本があります。
これをローマ人の物語の塩野七生氏は「民主主義では〝質〟は、まったく問題にされない。〝量〟だけが支配する世界なのだから」と皮肉っています。
次世代のために今の世代が考えなければならないのは、世界規模で見てもいえます。
二酸化炭素の排出量の増加に伴う地球温暖化や資源の乱獲、水不足、人口爆発など先送りできない問題が目の前に山積みです。
いわば日本を含む世界の状況は、大きな船に例えたら、今その船底には多くの穴がボコボコ開いていて、水がどんどん入ってきている状態です。
今なすべきことは上層階の一等船室に逃げ込むことではなく、下層階に行って穴を塞ぐことです。
今求められるリーダーは、一等船室に一部の人を誘導する輩ではありません。
下層階に入って穴をふさぐために死力尽す人です。
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