【火宅無常の世界(1)】
『三界は安きことなし、なお火宅の如し』
仏典の一節です。
『三界』とは「人生」のこと。
「人生とは、火のついた家に住まいしているように不安である」と仰言ったお釈迦さまのお言葉です。
隣の家から火が出てうちの屋根のひさしに燃え移った。
そんな状況下で、食事したり、テレビ見たりできる人があるでしょうか。
不安でとてもそれどころではありません。
私たちの生きるこの世は、いつ何が起きるかわからず、不安が絶えることはありません。
そんな人生を「火宅のごとし」と釈迦は喝破されたのです。
最近、香港の民主活動家の周庭さんが国安法違反の容疑で電撃逮捕され、翌日保釈される事件があり、日本で話題になりました。
保釈後の会見で「本当に不安で、怖さがとんでもなかった」と語っていましたが、無理もありません。
周庭さんはまだ23歳の女性です。
そんな若い女の子の家に中国警察が突如押しかけ、そのまま逮捕で連行されたのですから。
なぜ彼女が怖かったか、本人が口にしていたのは、国安法違反の刑罰は最大で無期懲役刑だそうで、最悪このまま無期懲役となるのだろうか、と思ったからだそうです。
無期懲役でもまだ囚人の人権が尊重される国はいいですが、中国って人権を大事にしてくれなさそうでないですか。
下手したら強制収容所に入れられてしまうかもしれない、という状況は、それはもうどんなにこそ怖かったと思います。
さいわい一夜で釈放され、よかったのですが、またいつ警察が突如家に押しかけてくるやもしれません。
いや、もう亡命でもした方がいいよ、と言いたくなりますが、当然ながらパスポートは中国警察に没収され、常に監視下におかれています。
ということは彼女はこれから先の人生ずっと、逮捕を恐れ、不安の中、過ごさなければならないと言うことです。
もしあなたがそんな状況下におかれたら、どんな気持ちになると思いますか。
どんなに貯金通帳に残高があっても安心できません。
好きな人と家庭を築いても不安は絶えません。
いつまた突然逮捕され、独りぼっち、着の身着のままで連行されるかもしれないのですから。
しかも逮捕後、無期懲役や収容所の可能性だって否定できないのですから。
そんな不安にさらされている周庭さんの境遇をかわいそうに感じます。
しかし考えてみれば、私たちもまた一緒だと言えます。
唐の高僧、善導大師は私たちの実態を「常に死王と共に居す」(いつも私たちの近くには死があって、いつそれは我身に襲いかかってくるかもしれない)と説かれています。
常に監視され、突然押しかけてくる中国警察も怖いですが、常に背中合わせにあり、いつ突然襲ってくるかわからぬ死は、実はもっと怖い存在です。
しかも中国警察の場合、逮捕後に収容所の可能性があって怖いのですが、死の場合、死んだ先の世界は収容所よりもっと恐ろしい世界なのかもしれませんよ。
実は周庭さん以上に不安にさらされているのがすべての人間の姿なのです。
それはジェフ・ベゾスやビルゲイツといった大富豪でも同じこと。
世界中の誰もが、死を前には何の対策も準備もせず、赤子のように無防備なのです。
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