【愛憎
(1)】
「怨憎会苦」という苦しみがある、とお釈迦様は説かれています。
嫌いな人、苦手な人と会わなければならない苦しみのことです。
「今日もあの人に会わなければならないのか」
と思うと、朝からため息が出てくる。
「あーあ、またあの人に何言われるのか」
と思うと、道中も胸が重い。
そんな経験のある人は多いことと思います。
「あの人が行くなら、私は行かない」と旅行を断ったり、
「あの人が受講するならば、私は出ない」と言ったりする人があります。
中には「あの人がいる部屋にはいたくないから行きません」とまで言う人があります。
嫌いな人が部屋にいるだけで耐えられず、気持ち悪くなってくる、ということなんですが、
私自身、そこまで人を嫌いになった経験がないので、
「別にその人が部屋にいても、 言葉を交わしたり、視線を交わしたりしなければいいじゃないですか」
と言うと、
「嫌いな人の吐いた息を吸うのが嫌なんです。
吐いた息が部屋の空気と混じって自分が吸っているかと思うと、虫唾が走るんです」
と言われました。
そんな嫌いな人がもし上司だったらどうなるのでしょう。
「嫌いだから職場に行きません」
と言ったら、たちまちリストラにあうんだし、生活できません。
やはり鼻つまんででも、出勤しなければなりません。
もし嫌いな人が夫だったらどうなるのでしょう。
「なんで夫が、嫌いな人になるの?
好きで一緒に生活したいと思った人じゃないの?」
と思われる人もあるかもしれませんが、
そこは「愛憎一如」という言葉が仏教にあるように、
よくあることなのです。
「愛したのに、大切にしたのに、こんな人とは思わなかった」
と失望すると、余計に憎しみがわいてくる、というのです。
とことん愛しただけ、その想いが報われなかった時に、
顔も見たくないほど憎しみがつのるといいます。
「妻の顔を見るだけでムカムカする」
「夫のいる部屋の空気を吸いたくない」
という夫婦は、昨今珍しくありません。
「怨憎会苦」
職場でも家庭でも、生きてゆく以上、
この苦しみは避けられません。
科学がどれだけ進歩しても、
政治形態が変わろうと
もう変わることのない
人間の普遍的な苦しみの一つといえましょう。
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