【幸福(3)】
創価学会や立正佼成会といった、戦後の復興期に急速に拡大した新興宗教は、
「これを拝んだら(これを唱えたら)ご利益がありますよ」が謳い文句でした。
彼らの言う「ご利益」の中身は、
貧・病・争の苦しみがなくなって、富・健・和になるというもの。
「題目唱えたら貧乏とは縁切りだ」
「板まんだらを拝んだらどんな病気も治る」
と力説し、
「入信したら夫婦仲がよくなった」
「題目の功徳でがんが消えた」
との体験談で引きつけるという類いの団体があちこちにありました。
令和の今日、貧・病・争を解決するご利益宗教はあまり流行らないようで、
どこも信者獲得に苦戦している様子です。
それは貧・病・争を解決し、物質的に恵まれても、イコール幸福ではなかったことを
戦後70年間で日本人は体感してしまったからといえましょう。
人類が長い歴史の中でずっと苦しんできた脅威は「飢餓」と「疫病」と「戦争」でした。
この3つがなければどんなに幸せだろうとどれだけの人が願ってきたことでしょう。
飢餓と疫病と戦争のない理想の国を「ユートピア」「桃源郷」と呼び、
人類は何十万年昔からずっと憧れてきたのです。
その人類の悲願を今日の日本は、ほぼ満たしています。
もちろん今後のことは無常の世ですから何が起きるかわかりませんが、
現段階でいえば今日の日本で「飢餓」「疫病」「戦争」の脅威にさらされている人はほとんどありません。
皆国民健康保険で医療費も安く、清潔な住環境で「疫病」はほとんどなく、
長寿は世界トップクラスです。
GDP世界3位の経済大国で、食料廃棄率は世界一、「飢餓」で死ぬ人はごく限られており、
70年以上平和が続き、「戦争」を知らない人がほとんどです。
ところがです。
そんな「飢餓」「疫病」「戦争」のない日本を
「ユートピア」「桃源郷」と讃える人がどこにあるでしょうか。
治安も悪く、政情も不安定なペルーやハイチ、フィリピンといった国の自殺者は、年間10万人あたり5人です。
対してスイスやカナダ、ニュージーランドといった比較的豊かで福祉も整った国では、年間10万人あたり10人です。
日本に至っては、10万人中18人です。
政治、経済、医学、科学、あらゆる人間の叡智は、
「飢餓」「疫病」「戦争」の脅威を克服し、
「豊か」で「長寿」で「平和」な社会を実現する方向に向けられてきたのに、
毎年自殺する人は一向に減っていない、
そればかりか先頭集団を走る国ほど自殺者が多い現状です。
私たちの幸福感は謎めいたガラスの天井にぶち当たっていて、
前例にない成果をどれだけ上げようと増えていきません。
たとえすべての人に無料で食べ物を提供し、あらゆる病気を治し、世界平和を確保したとしても、
そのガラスの天井を破れるとは限りません。
真の幸福を達成するのは楽ではないことが知らされます。
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