【人身受け難し(1)】
もうすぐ終戦記念日です。
8月になると、原爆や戦争に関するニュースや映画が目に入り、
在りし日の戦争を日本全体が思い返します。
あの時期、人命は「一銭五厘の命」と言われました。
「お国のため」と声高に叫ばれ、人命が軽視された時代でした。
8月15日玉音放送の朝にも「沖縄への特攻隊出撃命令」が
海軍・陸軍からでて戦闘機が飛び立ち、若い命を散らしたそうです。
終戦後に、自分の息子が8月15日に特攻で戦死した
との報を聞いた遺族は、どんな気持ちだったでしょう。
「お国のため」と国民を煽っていた政治家が、
戦争終われば一転、民主主義を高らかに謳い、
「人命は尊い」「人の命は地球より重い」
と言い始めました。
「アホらしい・・・。あの戦争は何だったんだろう・・」
多くの日本人が価値観の訂正を迫られたのです。
今日の社会では「人命は尊い」となっています。
「人の命は地球より重い」とも言われます。
しかし「なぜ尊いの?」「なぜ地球より重いといえるの?」
と聞かれて、その理由を明言できる人は、
果たしてどれだけいるでしょうか。
自殺する人は「私は尊いとは思えません」と
行動で主張しているようなものです。
「こんな人生ならさっさと終わらせたい」
という人の中で、実際に行動に移すのが自殺する人、
口でそういうことを言う人はその何十倍といましょうし、
口では言わなくても、心で思っている人は
さらに何十倍、何百倍になるでしょうし、
潜在的に思っている人も入れれば、
ほとんどの人が当てはまります。
「人命は尊い」根拠を皆知らず、
ただ言葉だけ飛び交っているだけだとしたら、
またいつか「○○のため」を美辞麗句に、
命を軽く扱う時代がやってくるでしょう。