【忍辱(1)】
「北窓開く」という春の季語があります。
冬の強く冷たい北風を避けるために開けていなかった北窓を開き、
やわらかい春の空気を部屋に入れる、という意味の季語です。
日本人は春の訪れを様々な表現で愛でてきたのですね。
私がこんな俳句の季語にも共感を覚えるようになったのも、富山に来てからです。
富山県に住んでかれこれ3年半になりますが、
富山の冬はなかなか圧迫感があります。
常に曇天、雪が降ればまだ早朝暗い中から早起きし、駐車場の雪かきです。
運転中も雪で視界が悪く、渋滞も相次ぎ、スリップ事故もあり、大変です。
それだけに長い冬が明け、春になった今の季節は、
なんというか、世界がぱっと広がったような開放感に包まれ、
ほのかな幸福感、高揚感さえ感じます。
この感覚は東京に住まいしていたときにはなかったものです。
寒さに身を縮め、顔に当たる雪に顔をしかめていた長い冬が、
このうきうきした喜びの元になっているのは間違いなさそうです。
エアコン、ストーブが完備している家に住み、
外出しても暖かい服を着て、
除雪された道を暖房のよくきいた車で移動している現代でさえ、
春の訪れにはこのようにどこか心が浮き立つのですから、
すきま風の入る家で身を縮め、いろりで暖をとっていた昔の人たちは
どんなにこそ春の訪れを喜んだことでしょう。
人生もまたしかり。
窮乏に耐え、努力を重ねた幾年月。
その道のりが険しければ険しいほど、そして長ければ長いほど、
その努力が実ったときには、
余人のうかがい知れぬ深く大きな喜びがあるのでしょう。
「踏まれても
根強く忍べ 道の草
やがて花咲く
春が来るまで」
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