【人身受け難し(1)】
平成の30年間における自殺者推移は、
バブル崩壊で会社の倒産、リストラが相次いだ一時期と比べると、やや減少傾向にあります。
しかしこと青少年の自殺者に限ってデータを取れば、年々右肩上がりです。
今日の日本の死因のトップ3は、悪性腫瘍(がん)と心疾患と脳疾患ですが、
10代、20代、30代に限って言えば、死因のトップは自殺です。
40代になるとトップこそ悪性腫瘍(がん)ですが、2位は自殺です。
青少年の自殺は日本の抱える大きな社会問題なのです。
若者の自殺ほど悲惨なものはありません。
「これからだというのにどうして...」と周りの人を苦悶の底にたたき落とします。
知人が「子供が親より先に死んではダメだよ」と言っていました。
子供を亡くして親が喪主となる葬儀に参列し、強く思ったそうです。
親族の悲しみ、とりわけ親のそれは痛々しいほどで、
その場に居るのもいたたまれなくなるほどだとか。
ましてやその子供の死因が自殺だったとなれば、
なおさら悲惨なものになるのは言うまでもありません。
青少年の自殺を食い止めるにはどうしたらいいか、
自殺対策基本法は改定が重ねられ、こころSOS対策本部を設置したり、
国も種々の対策に乗り出していますが、「十分な対策とは言い難い」現状が続いています。
どうしたらこの憂慮すべき問題が解決できるのか、
各界の識者が侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を重ねています。
いわく、
「教師による生徒の面談を強化すべき」
「学校の成績偏重の教育の見直しをすべき」
「親の幼児教育のアドバイスを」
「外で遊ばなくなったからだ」
「添加物を使った食生活だ」
これらはいずれも一因には違いないのでしょうが、
核心の【根本的な自殺の理由】がまったくと言っていいほど語られていません。
どんな話し合いがなされても、根本の自殺の理由にメスが入らなければ、不毛の議論が続くだけです。
では自殺の根本的な自殺の理由は何なのか。
それは【なぜ自殺してはいけないのか】
この問いの答えがまったく教えられていないからです。
ここが根本です。
子供が万引きするのをやめさせたいと思ったら、
「なぜ万引きはいけないのか」「どうして人のものを取ってはいけないのか」
徹底して子供が分かるまで話をしなければなりません。
それが教育です。親や教師の役目です。
「なぜ万引きはいけないのか」そこが分からない子供に、それを教えることを後回しにして、
監視カメラを増やすとか、お小遣いを渡すとか、副次的なことだけ論じていても
子供の万引きはなくなりません。
誠心誠意「万引きするとどんな目に遭うのか」「なぜいけないことなのか」教えなければなりませんし、
「本当にそうだ。やっちゃいけないことだったんだ」
と心にコトッと納得いくまで、話をしなければなりません。
自殺だって同じです。
「どうして自殺は愚かなことだと言えるのか」
「なぜ自殺してはいけないのか」
「苦しくても生きねばならないのはなぜなのか」
子供に分かるよう、伝えなければ、相次ぐ自殺は止められません。
しかしこの問いに真正面から答えようとすると、簡単ではありません。
文科省の官僚や政治家、学校関係者だけで解決できる問題とは違います。
簡単でないどころか、古今東西の人類の最大の疑問、
「何のために生まれてきたのか」
「なぜ人は生きなければならないのか」
と取り組むことになるからです。
それをフランスの作家、アルベール・カミュは
『真に重大な哲学上の問題はひとつしかない。自殺ということだ』
『人生が生きるに値するか否かを判断する、これが哲学の根本問題に答えることなのである』
と言っています。
=========
仏教に説かれた生きる意味を分かりやすく体系的に学べる
全20回の無料メール講座です。
おもしろそうだなと思われた方はこちらから登録できます。
登録解除もいつでも自由なので、一度お試しに覗いてみてください。