■「オレはあいつより勝っている」と思いたいのが、人間です。
思いたいだけでなく
「あいつ」にもそれを思い知らせたいと思っています。
さらに「あいつ」だけでなく、
周りの人にもそれをわからせたいと思っています。
これは大変強い私たちの渇望です。
■ところが、私たちがよく知っておかねばならないことは、
自分と同様に「あいつ」も同じ渇望を持っているということです。
お互いが「オレはあいつより勝っている」と
渇望しているのですから、
こちらが自分の思いを押し通したら、
たとえその時には相手は引き下がっても、
心はおもしろくない思いで一杯でしょう。
■空腹の人が食べようとしている目の前の定食を奪ったら、
どんなに気を悪くするかわかるので、
私たちはそういうことはしません。
ところが、私たちは
相手が飢餓感にも似た思いで渇望している
「人より優れていると思いたい心」を無視して、
いとも簡単に、なじったり、馬鹿にしたり、
見下したりする言動を取ってしまうものです。
それは人が食べようとしている定食を
ひっくり返すような愚です。
■怒らせたいのなら、そうすればいいのですが、
直ってほしいと思うなら、まことに逆効果です。
『人を動かす』の著者カーネギーは
「他人のあら探しは、なんの役にも立たない。
相手はすぐさま防御態勢をしいて、
なんとか自分を正当化しようとするだろう。
それに自尊心を傷つけられた相手は、
結局、反抗心をおこすことになり、
まことに危険である」
と言っています。