【人身受け難し(1)】
「何のために生きているんだろう」と悩む若者に、
「そんな悩みは思春期特有の、センチメンタルな感傷だよ」
「若い時にかかる一種の熱病のようなもの。自分にもそんな時期があった」
と一笑に付し、まともに取り合わない人があります。
私はこうした、まるで大人である自分からすると青臭い悩みだ、と言わんばかりの声に触れると
「じゃあ大人になった今のあなたの心の中には“何のために生きているんだろう”という疑問はまったくないのか」
と問い質したくなります。
三省堂の大辞林にも
「若者が自己の存在意義に悩むのは、子供から大人になる思春期特有のもので、これを克服して自立した市民になる」
とありました。
こんな文章を読むと、やはりこれを書いた三省堂の大辞林の編集者に言いたくなるのは、
「ではあなたは“何のために生きるのか”という思春期特有の悩みを、どう克服されたのですか」
との問いです。
そして「克服したことで、現在どのような自立した市民となられたのですか」と
重ねてお尋ねしたいですね。
私がこんなことでも言ってみたくなるのは、
「何のために生きるんだろうか」という問いは、
決して思春期特有の青臭い感傷ではなく、
どの年代でも、どんな自立した市民であっても、
すべての人の心の底に確実に潜在していると思うからです。
そしてその隠れた問いは、青春期だけでなく、
人生のあらゆる時期、何かのきっかけで顕在化し、
私たちを戸惑わせ、うろたえさせるものであるからです。
どんな時、顔を現すのか、いくつか代表的なところを挙げてみましょう。
【燃え尽き症候群】
オリンピック後のスポーツ選手の心理状態について使われることが多い。
それまでの人生最大の目標を終え、打ち込む物が何もなくなり、虚脱感に襲われる。
【○○ちゃんママアイデンティティクライシス】
「〇〇ちゃんママ」と呼ばれるようになり、私という存在を失ったような気がし、不安と虚しさを感じる。
【ミッドライフクライシス】
「人生の午後」「思秋期」とも言われる。
女性は、現実が見えてくるプロセスで、不安と葛藤を覚える。
男性は退職し、経済力、人間関係、体力などで、多くの喪失感を味わい、自分の存在意義に戸惑うようになる。
【老人性うつ】
配偶者との死別、老化に伴う精神的・肉体的な衰えから、生きる意欲を見失い、すべてが嫌になる。
小説『異邦人』などで知られるアルベール・カミュは
「人間の奥底には、生きる意味を「死に物狂い」で知りたがる願望が、激しく鳴り響いている」
と言っています。
「生きる意味を知りたいなんて青臭い感傷だよ」
と言い放つ人の心の底にも、生きる意味を知りたい願望は厳としてあります。
ただ目の前のことに多忙のため、
自分の心なのに、自分が気付かないだけのことです。
それでもふとした瞬間に
「同じことの繰り返しだな」
「つまんない。何かいいことないかな」
「このまま歳取っていくだけなのかな」
「こんな人生、長生きしたくないな」
といった、ぼんやりした不安、寂しさが胸に去来するとしたら、
その心こそ「生きる意味がわからない心」なのです。
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