【瞋恚(1)】
NHKのアンケート調査によると、夫婦ゲンカの原因は、
家事のしかたや、ちょっとした物の置き場所など、
ささいなきっかけが多いとのこと。
ある夫婦が離婚に至ったけんかのきっかけは
「夫の靴下の脱ぎっぱなし」だったそうです。
たかが夫の靴下の脱ぎっぱなしくらいで離婚なんて、
と失笑する人もあるかもしれませんが、
それは妻にとっては、ただの“脱ぎっぱなしの靴下”ではないのです。
「今まで何度も言ってきたのに、少しも聞いてくれない」
という何十年も積み重なった失望の象徴であり、
いつも自分の言うことが軽んじられてきたことの証であり、
大事にされてこなかった寂しさと怒りがそこにあるのです。
夫にしても、妻のとげとげしい態度、うんざりした口調に、
「その言い方はないだろ」「その態度は何だ」
と腹が立って仕方ありません。
「家庭を支えるため、妻子を守るために、
職場で下げれない頭も下げ、様々なことに耐えているのに、
おまえと子供たちのためと思って働いているのに、
そのオレに対して、いつもいつも、そんな態度しかとれんのか」
との、やるせない憤りがあるのです。
夫婦げんかには、その二人にしかわからぬ、
第三者にはうかがい知ることのできぬ、
何十年の歴史があっての今のけんかなので、
「たかが靴下くらいで」ではありません。
縁の浅い人なら、我慢でき、受け流すことができたことでも、
縁がとても深い人には、怒りが出てきます。
私たちは縁の浅い人との間には、
大きな喜びを交わすこともなければ、
大きな怒りをぶつけ合うこともありません。
縁の深い人だからこそ、様々な喜怒哀楽が激しく生じるのです。
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怒りの心を穏やかにする智恵が仏教に教えられていますので、
その仏教の教えを動画で解説しました。
今年一年、少しでもイライラする心に振り回されないよう、
参考になればうれしく思います。
http://kikutaniryuta.com/koza/2-1/service15.html