【愚痴(3)】
■大学時代、教室の机に
『青は藍より出でて藍よりも青いので藍は困っている』
という誰かの落書きがあって、くすっと笑ったのを覚えています。
青色(紺色)の染料は、植物の藍を原料としていますが、
その染料で染めたものは、藍よりも青い、の意で
【弟子が師匠を凌駕する】ことを指します。
「藍」よりも青い「青」を「藍」はおもしろくない。
これも妬み嫉みの『愚痴』の心です。
■私は手塚治虫の漫画で育ったと言ってもいいくらい
手塚治虫は読み込んでいますが、
その手塚治虫は石ノ森章太郎が生み出した仮面ライダーに
幼い息子が目を輝かせて夢中になっている姿に、
血が出るほどの強い力でこぶしを握り締めながら、
我慢して眺めていた、というエピソードを聞いたことがあります。
石ノ森章太郎は高校生で投稿した漫画が手塚治虫の目に入り、
『鉄腕アトム』のアシスタントを務め、
手塚の仲介で漫画家としてデビューしているのですから、
まさに愛弟子といっていいのですが、
そんな石ノ森に彼は文字通り血の滲むような嫉妬心を抱いていた、
というのですから驚きです。
■B・ラッセルが数学を教えていたとき、
後にハイデガーと並んで二十世紀最大の哲学者とよばれる、
ウィトゲンシュタインが受講をはじめました。
それからわずか一、二年のうちにラッセルは、
彼から鋭い批判を浴びせられるようになります。
ラッセルはそれから、ウィトゲンシュタインを口汚くののしり、
著作の一部から彼の名前を削除したと言われています。
■手塚治虫にしても漫画界の巨匠であり、
B・ラッセルはノーベル賞作家であり、
泰然自若としてていい、盤石の立場だと思うのですが、
教え子から受けた屈辱は、赤の他人から受けるより
ずっと激しいものだったのでしょうか。
■弟子の成長を念じ、陰に陽に心をかけ、
頭角を現していくことに目を細めたこともあったでしょうに、
自分をも凌駕するようになると、
今度は怨みと妬みの心に身を焦がすようになり、
足を引っ張り、引きずりおろしたくなる。
これも愚痴の心いっぱいの、悲しい凡夫の実態です。
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