【慢(1)】
■仏教では六大煩悩の一つに「慢」が挙げられます。
私たちを苦しませ、悩ませるものが
「慢心」だと釈迦は説かれています。
慢心から地獄は始まるのです。
■「なぜ日本は戦争をおこし、負けたのか」
確かに局地的にいえば、
「せざるをえなかった」ところまで追い詰められた
といえましょうが、そこまでに至った背景を追っていくと
やはりあの戦争の原因は、
「日本の慢心にあった」と私は思います。
■歴史といっても、その時代を生きている人々の思いが
国や世界を動かすものです。
今年のトランプ当選も、イギリスのEU離脱もそうですし、
当時の日本では
「万世一系たる神の国」「八紘一宇」「世界の盟主」
が民衆の思いであり、
新聞も軍部も政府も、その時代にあった「思い」のうねりに
引きずられていったといえましょう。
■昭和初期のその空気というのは、
明治時代にはなかったものでした。
アジアの小国である日本が、
どうやって欧米からの植民地化から逃れることができるか、
清やインドの二の舞になってはならぬという
焦燥と緊迫感が明治維新の原動力となり、
その後の明治政府の推進力でした。
ヨーロッパの近代的な軍事制度の習得に励み、
各国の軍事科学専門書を猛勉強し、
さらに陸軍士官学校や海軍兵学校で、幹部の養成にも力を注ぎます。
日清・日露戦争も、このままではロシアから
のど元に刃を突きつけられたようなものだと、
窮鼠猫をかむ思いで、苦慮の末に仕掛けた戦争でした。
その「落とし所」も明確で、アメリカの仲介での講和でした。
それが昭和になると、戦争の勝利が絶対化し、
和議を提案することなど非国民と断罪され、
やがて「一億総玉砕」が勇ましく声高に叫ばれています。
どうしてそうなっていったか、
その兆候は日露戦争の勝利から始まったといわれます。
日露戦争後、日本軍は欧米に学ぶことを辞め、
皇軍の決めた範令を丸暗記することが軍幹部教育となります。
また、軍部は批判を嫌がり、評論そのものを封じ、
日本軍の精神力、技術、戦闘能力の賛美だけが
喧伝されるようになります。
批判から改革が起き、指摘から向上が始まるのは世の鉄則ですが、
それを日本軍は、自ら放棄したのです。
■人は慢心すると、批判を許せなくなります。
自分を賛美する者を喜び、批判する者を徹底して否定する、
そうさせる心は「慢心」です。
慢心は自己を正そうという向上心を失わせ、
その人を破滅に追い込む元凶なのです。
これは一個人のみならず、会社も、一国でも同じことです。
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