【出世本懐(1)】
「ビジネスマンは『社史』を学べ」といわれます。
なぜ自分の会社について学ぶことが大事なのでしょうか。
今度の会議をいかに乗り切るか、とか、
同期で誰が最初に課長になるか、とか、
とかく目先のことにムキになってしまうのが私たちですが、
「社史」を学び、数十年前に働いていた人たちについて知ると、
創業の苦労に感謝の気持ちを抱きますし、
自分を取り巻く視点が、より大所、高所からのものになり
自分の役割の重要性をも、認識することになります。
「社史」には、仕事に前向きになれるのはもちろん、
仕事で成功するためのヒントもたくさん詰まっているのです。
私は仏教講師として、20代の頃、
島根県で親鸞聖人の教えを伝えていた時期があります。
島根県は江戸時代、出雲藩と石見藩に分かれており、
旧石見藩の地域は浄土真宗が多く、
旧出雲藩だった地域は浄土真宗は多くありません。
また山間の村でも、とても浄土真宗が熱心な村もあれば、
そうでないところもあり、なんでだろうと興味がわき、
図書館で郷土の浄土真宗の歴史を調べたことがあります。
興味深い史実が多々ありました。
安芸藩からきた布教使が川沿いに伝え、
禅宗の村が真宗の村になったとか、
滋賀県の商人が立ち寄った宿のある漁港で、
親鸞聖人の教えを伝えたので寺が建った、など書かれてありました。
それを読みながら、現代、私が島根で仏教を伝えるのも、
この地で親鸞聖人の教えを伝えた先輩諸氏の連綿たる流れの中で、
新たな一ページを加えることになるのだと
意気に燃えたのを思い出します。
会社の歴史、真宗の歴史、郷土の歴史、家族の歴史、
学ぶべき歴史は人によっていろいろ違いましょうが、
歴史を学ぶのは、大きな時代のうねりの中で、
自分はなぜここに、このように居るのか、
そして今何をすべきか、
己の使命を自覚する視点の一つとなりえましょう。