【心施(1)】
富山は稲刈りがすっかり終わり、
涼しい風が少し肌寒く感じられるようになってきました。
やがて木々が紅葉し、それが散る頃にはいよいよ景色は色彩を失い、
雨が多くなり、雷が鳴り、その雨が雪に変わる頃には
一面、墨絵のような風景になります。
それから春までは、うんざりするほどの長い曇天、
あるいは雪の日が続きます。
そんな富山の人が年末年始に東京に帰省すると、
寒さは厳しくも、関東特有の乾いたカラッとした晴天に感動して
「冬なのに晴れてる!東京はいいなあ」と何度も口にします。
東京に住んでいるときは私も、
富山の友人がそう口にする気持ちは分かりませんでしたが、
富山に住むようになり、よーーく分かるようになりました。
長靴で雪をかき分け、駐車場の車の雪を落とし、
身を縮めながら傘さして雪道を歩いている日が毎日続くと、
だんだん滅入ってきます。
朝から雲一つない冬の東京の晴天が懐かしくなります。
ところがこの思いも、東京に住んでしばらくすれば、
またそれが最初から当たり前に思えて、
晴天の有り難みを忘れてしまうのでしょうね。
人間の感謝の気持ちというのは、続かないものです。
○仕事がある。
○「おかえり」と出迎えてくれる人がいる。
○健康で、身体に不自由ない。
これら全て感謝しなければならないことなのですが、
当たり前にしがちです。
失ったときに初めて有り難みが分かるようでは後悔しますので、
今から感謝の気持ちを持って、
またそれを言葉でも表していきたいなと思います。