【有無同然(うむどうぜん)(1)】
世界的に最も権威あるミシュランガイドで星がつくと、
たちまち人気店となり、客が殺到します。
まして最高の3つ星を獲得すれば、店は何週間後まで予約で埋まり、
世界中の国の要人や芸能人も訪れる人気店になります。
ミシュランの星は、世界中のシェフの目標、あこがれであり、
いつかミシュランに認められるような味を、と日々努力を重ねています。
ところがミシュランの星がつくことで、
精神的に追い詰められるシェフは少なくなく、
「ミシュランの呪い」という言葉まであるそうです。
フランスの三ツ星レストランのシェフで、
世界的に知られたベルナール・ロワゾー氏の、
ライフル自殺も「ミシュランの呪い」でした。
ロワゾー氏は、常連ではない客が店に訪れるたびに、
一般客を装って調査にきたミシュランガイドの調査員ではないかと恐れ、
不安発作に襲われていたそうです。
生前から「もし星を失うようなことがあれば、自殺する」と口にし、
ミシュランの星を失うことへの恐怖感で、
年々精神的に追い詰められていったようです。
フランスを代表する三つ星レストランのシェフ、セバスチャン・ブラス氏も、
ミシュランガイド非掲載の希望を表明しました。
その理由は、抜き打ちで行われるミシュランの調査、評価に対する「重圧」からの解放を求めて、とのことでした。
星を獲得した時の味を絶対損なわないよう、正確にレシピを再現するようになり、
新たな食材で自由な創作料理に挑戦できなくなったつらさを語ったセバスチャンの動画は100万回以上再生され、
世界中の同業者の多くの共感を得ています。
仏教に『有無同然』という言葉があります。
「有っても無くても苦しみは変わらない」という意味です。
無いときは無いことで苦しみ、有れば有ることで苦しむ。
無い人は鉄の鎖で縛られ、ある人は金の鎖で縛られていると説かれます。
これさえあれば満足できる、幸せになれる、
と世界中のシェフが躍起になって追いかけているミシュランの星も、
手に入れると、今度は失う不安が襲い、苦しくなる、
これも『有無同然』の一コマといえましょう。
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