【御同行(1)】
お釈迦様は鉄壁のカースト制を敷くインド社会で「人類は平等なり」と宣言され、
親鸞聖人は身分制度も根強い封建社会にあって「御同朋・御同行」と大衆の中に飛び込んで仏法を説かれました。
そのブッダの教え、親鸞聖人の教えを聞き、人に伝える使命を持つ者として
興味深かった本が、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」です。
黒人男性死亡の抗議デモが激化している今だからこそ、この本をちょっと取り上げてみたいと思います。
西欧列強が世界を植民地化していた時代、
白人は自分たちが有色人種よりも人種的に優秀であると当然視していましたし、
21世紀の今でも、差別になるので口に出してはいけないというマナーは心得ているにせよ、
そんな優越意識を持っている白人は多分にあるかと思います。
「銃・病原菌・鉄」に書かれている内容を一言で言えば、そんな白人至上主義を否定した本です。
一部の差別意識の強い白人だけでなく、どこの国にも、あの人種は優秀だとか、あの民族はダメだとか、
レッテル貼る人がありますが、そんな先天的な人種の優劣はないことを学問的に丹念に考察してます。
なぜ著者であるダイアモンドはこの本を書くようになったのか、
パプアニューギニアで生物学の研究をしていた彼に、ヤリという現地人がしてきた奇妙な質問がきっかけでした。
その質問とは「なぜ自分たちには自分のものといえるものがないのか」というものでした。
200年前までほぼ石器時代の暮らしぶりだったニューギニアに、
白人が「積み荷」(カーゴ)を持ちこみ、
その中身は鉄の斧、マッチ、医薬品、衣服、飲料、傘など、
ニューギニア人にとって魔法の品々でした。
いったい自分たちは何をしてきたのか。なんで白人と自分たちとではかくも違うのか、それを教えてほしい、
という質問だったのです。
この本でダイアモンドが学問的に導き出した結論の答えは「環境要因」でした。
ユーラシア大陸生息の馬は人間に従順で輸送、軍事に多大な貢献をしたが、
アフリカ大陸生息のシマウマは気性が荒く、家畜化できなかった、とか
ユーラシア大陸には米と麦が自生していたが、
アメリカ大陸に自生していたのはトウモロコシで、カロリー差は歴然としていた、とか
他にもいろいろありますが、おもしろかったです。
本のタイトル「銃・病原菌・鉄」は、
ヨーロッパ人が新大陸をあっという間に占領するに甚大な影響を与えた三つです。