夫は妻の心がまったくわからない。
妻は夫の心がまったくわからない。
ぜんぜん通じない。
男女の心の構造は非常に違うのです。
同じ「人類」の枠でくくっていいものか。
「男類」「女類」と呼ぶべきだ、という人もあります。
それでも同じ屋根の下で生活を共にするのですから、
せめてわからないことを反省して
察する努力を死ぬまでし続けなければならないでしょう。
あるエッセイの内容が身に沁みますので、
紹介いたします。
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彼は、サラリーマンである。
ひそかに彼が見くだしていたBが、
人事異動で、同期から、
初めて課長に昇進した。
彼は、ショックを受けた。
だが彼は、Bにかけよって、
「おい、おめでとう。よかった、よかった」
と、肩をたたいて握手を求めた。
負けたくやしさを無理にがまんして、
まったく平気なように演技する。
さらに、おきざられ組は、
当然のように集まってBの祝賀会を催す。
お互いに、ヤセがまんしたことを、
他人に知られたくないという思いは同じである。
屈辱を自覚するのが怖いのだ。
ある線まででくいとめたい。
男心は哀しいではないか。
くたくたに疲れた祝賀会の後にも、
まだ彼らには難関が残っている。
家の玄関をあけると、奥さんが迎える。
「あら、また飲んできたのね」
「うん。Bが今日、課長になった」
「その祝賀会があったんですね」
だれとだれが昇進したのかと、奥さんが追及する。
「同期が先に課長になったっていうのに、よくも平気でいられるわね」
「そりゃ同期の全員が、同時に課長ってわけにはいかんさ」
「なら、あなたがなればいいでしょ」
「いやあ、Bは優秀だからね。適任だよ。さあて、風呂にでも入って、ねようか」
「意地もなにも、ありゃしないんだから」
ヤセがまんなしでは生きていけない涙ぐましい男の胸の内が、
まったくわかっていない。
察しようともしない。
聡明な奥さんなら、それに気づいたうえで、そっとしておく。
悪妻はもちろん、気づかない。
見せかけを真にうけて突っかけていく。
男のコンプレックスに、
妻が土足で踏みこんではならない。
ヤセがまんでは、すまなくなろう。
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お互い自戒していきましょう。
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