【悪口(1)】
先日、ファミレスで妻と食事していたところ、
隣の30代くらいの2人の女性の会話が漏れ聞こえてきました。
2人の共通の知人の誰かのことを
「あの人、サイコパスだと思う」「やっぱりそうだよね」
と言い合っているのです。
「いや、その呼称は軽々しく人の評価に使っちゃダメでしょう」
と思わず横から言いそうになってしまいました。
サイコパスとは猟奇殺人、大量殺人鬼に見られる人格障害であり、
そうでなくても、その予備軍とされ、
良心や善意のない人、人を人と思わない人格です。
脳科学者が書いた『サイコパス』という本がベストセラーにもなり、
最近は世の中に認知される言葉になりました。
本を手に取って「あ~、あの人のことだ」と勝手に、
自分の嫌いな人に当てはめて読んだ人が多いと思います。
そして人に「あの人、サイコパスかも」とまた言うものだから、
サイコパス疑惑、サイコパスの嫌疑をかけられている人が
職場でも、家庭でも、クラスでもいる、という現状です。
私たちは、自分をいらつかせる人を指して「あれはエゴイストだ」
「あの人は自己中だ」「冷たい人」「自分のことしか考えてない」
と悪く言いますが、その新たな悪口の形に
「あれはサイコパスだ」が登場しているように思います。
自己中だ、冷たい人だと言われても嫌ですが、
それならまだその人の主観による評価ですが
サイコパスだと言われたら、先天的な人格障害ですから、
そんなレッテルを安易に人につけていいものではありません。
私も人と接する仕事ですから、
中に本当に常識では理解できない人がいるのは理解していますし、
身を守るためには、誰でも彼でも気を許してはならない
のはわかります。
しかしあまりに安易に人をサイコパス呼ばわりする危険性を
憂慮しています。
人を評価するとき、褒め言葉よりも悪口の方が
強力に伝播していきます。
「あの人が○○さんのことをこう言っている」と、
どんどん広まっていく。
また聞く人も褒め言葉より悪口の方が、
信じやすく、影響を受けやすいのです。
だからたいてい悪口は、本人まで伝わります。
少々のタイムラグはあっても、まず伝わります。
またその悪口は、本人に伝わるだけでなく、
その人の子供や奥さん、親に伝わります。
それを聞かされた子供や親はどう思うだろうか、
そこまで考えて、悪口は慎まなければなりません。
最近は「サイコパス疑惑のある芸能人」と
サイトに紹介されたりしてますが、
そのサイトをその芸能人の友人も、子供も見るんですよ。
ほんの一面の言葉尻やエピソードで、
人にそんなレッテル貼っていいのか、と思います。
つまり言いたいのは、サイコパスという言葉が
多くの人に認知された結果、
全国各地でこういう会話が繰り広げられるようになり、
言われた方にとって、サイコパスという言葉が
いかにひどい侮辱なのか、分かって使っているんだろうか、
言われた人の気持ちを考えてみろ、と思ったのです。
仏教では『悪口(あっこう)』は、
口で作る四つの罪悪の一つに数えられ、
口にした本人は悪い報いを受けますよ、と説かれています。
自戒したいと思います。
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