【後生の一大事(1)】
Googleが不老不死の薬の開発に15億ドルを投じ、
この事業を「ムーンショット」と名付けました。
かつてアメリカが国家の威信をかけて臨んだ月面着陸アポロ計画に匹敵する事業である、
との誇りからの命名です。
この事業には世界中の富豪たちが強い関心を寄せ、
一日も早い完成を熱望する彼らのよる投資、支援が相次いでいます。
「老化しない」劇的な効果のある薬を最初に手にするのは一握りの金持ちからでしょうが、
それもやがて安価になっていき、
多くの人が老化しない体を手に入れる時代が近い将来くるかもしれません。
しかしそれでもやはり問題先送りするだけで、
人類が老いと病と死から解放されたことにはなりません。
昔、結核は不治の病と呼ばれ、1930年代には日本の死因として1位に挙げられる恐ろしい病気でしたが、
現在は、結核で亡くなる人はほとんどおらず、代わりに浮上したのが、
ガンや心疾患で亡くなる人たちです。
しかしこれも老化を極端に遅らせる薬ができたり、
電池を取り替えるように悪くなった内臓を新しいものに簡単に交換できるようになれば、
ガンや心疾患で亡くなる人はほとんどいなくなるでしょう。
未来の死因ランキングは現在と様変わりしそうですが、
やはり今では想像できない全く新しい病気や災害・事故によって、
死因のランキングは更新され続けることと思います。
100年生きようが、200年生きようが、
事故や病気、何かのことで人間は100%死にぶつかります。
「長生きできるようになった」とは、
「死ぬのが少し先に延びた」ということで、
死ななくなったわけではありません。
科学や医学、また終活や緩和ケアといった切り口など、
「死」を課題とした事業はこれまでもいくつもありましたが、
それは”死ぬまでどう生きればいいか”という問題であり、
「死んだらどうなるか」という”「死」そのもの”を扱った事業は一つもありません。
この大事業に挑戦された方がシッダルタ太子(のちのお釈迦様)でした。
仏教は「死の問題を解決する」教えです。
死の問題を解決するとは、
死の恐怖を感じないようにさせることでもなければ、
死なない身体を目指すことでもない。
「死んだらどうなるか」という大問題を解決することです。