【縁(1)】
ある事務職の社員が40万円の公金を机の上に出しっぱなしにしたまま
ちょっとその場を離れてしまい、
その隙に盗難に遭うという事件が起こりました。
防犯カメラの解析で、犯人は事務所に出入りする業者の一人だとわかりました。
泥棒目的で事務所に入ったわけではなかったのですが、
誰もいない部屋に手を伸ばせばそこにある一万円札の束があることに誘惑され、
つい出来心で盗んでしまったとのことでした。
この場合、もちろん盗んだ者が罪に服さねばならないのですが、
そんな人の目の触れるところに公金を置きっ放しにした社員も問題です。
人間の犯す悪事には、そうなるに至った本人の衝動といってもいい願望、欲望が原因なのは事実ですが、
それだけでは悪事は起きません。
自分の心の中に存在する目に見えない願望が、
何か外から働きかけられた縁に触発され、
その人の言動となって現われてしまうのです。
ちょうどそれは畑にまかれた種が、
夏の太陽や土中の養分に触発され、
芽を出し、実をつけるようなものです。
先程の40万円の窃盗事件なら、
「誰もいない部屋の、人目のつく机の上にむき出しのお金を置き忘れた」
という状況(縁)を作ったのが、問題です。
誰も見ておらず、自分が盗んだとは誰もわからない、と確信できる環境なら、人はやりかねません。
それでも絶対そんなことはしない、とはっきり言い切れる人はどれだけあるでしょうか。
罪を造った人も問題ですが、造らせた人も問題なのです。
時々、会計担当の社員が何千万円と着服したとの事件が報道されます。
ちょっと今月ピンチ、給料が出た時点で埋めておけばばれないだろう、
しばし借用という気持ちで着服するのでしょうが、
やがて公金を使い込むのに罪の意識が薄れていき、
出したり入れたりしているうちに公金が第二の財布のように思えてくる、
そしてある時、顧客からの問い合わせや前年度の決算で会計状況に査察が入り発覚、
顔面蒼白になるも時すでに遅し、
というのがたいていのパターンです。
こういう事件を見聞きするたびに思うのですが、
そんな大金を着服できても発覚しない会社の体制って何なんだ、とあきれます。
そんな罪を犯させてしまう会社のルーズな構造に問題があるとしかいいようがありません。
「見える化」し、「チェック体制を強化」して、
社員はおろか、社長だって勝手にいじれないような会計システムにすべきでしょう。
それが会社のお金を守ることになり、大事な社員をも守ることになるのです。
最近巷を騒がせた吉本芸人の闇営業問題でも、
吉本興業の構造的な問題があったことは否めません。
ギャラの支給も契約書も交わさず、
他事務所への移籍も許さず、仕事を回すでもなく、
それでは困窮する芸人が事務所を通さずに仕事を受けるのも致し方なく、
それらの環境がこのたびの事件の温床であることを
このたびの一連の事件が露呈したと思います。
何か一つの事件が起きた時、
犯罪を起こした者にだけ責任を押しつけ、幕引きにしてしまうケースが多いですが、
実はメスを入れなければならないところ、反省すべきところは、
そんな犯罪をさせてしまった環境、
彼をしてそうせざるを得なくさせた何か、にこそあるものです。
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